今思い出しても不思議なこと。
初めてソウルに行った時である。街角の店の前で釘付けになってしまった。笛の音に聞き入ってしまったのである。そのメロディは、私の胸をしめつけた。お腹の底から熱いものが胸から喉もとに込み上がり、思いがけな<涙があふれた。初めて聞く音色なのに妙に懐かしく不思議な体験であった。
私は在日2世である。
故郷遠く離れた日本で生まれ、自国の言葉も歴史も音楽もとりたてて知らずに成長した。ところが、その音色を聞いたとたん、確かにどこかで聞いた気がした。その音色は時間と空間を一気に超えたある場所に私を導いた。そこは、母の胎内なのであった。私は店の人に曲の名と演奏者を聞いた。スルギドゥンとの出逢いであった。スルギドゥンの音楽は、懐かしい場所、故郷の山や川、恋しい人の顔、懐かしい人の胸へといざなってくれる。
2005年2月11・12・13日エル大阪で在日一世の人生を描いたミュージカル「コンナムレノレ(豆もやしの歌)」を公演した。スルギドゥンのリーダー李準鎬(イジュンホ)氏に作曲して頂き、演奏して頂いた。その折の、もう一度スルギドゥンの音楽にふれたいという多くの要望に応えて今回NHK大阪ホールでスルギドゥンコンサートを開催することになった。
ゲストはパンソリ(世界無形文化遺産に指定)韓国無形文化財保有者であり、国立唱劇団の芸術監督である安淑善(アンスクソン)氏、韓国の至宝であり、韓国最高のパンソリ唱者である。また国楽歌謡という新しいジャンルを創り出した姜鎬中(カンホジュン)氏。ジャズサックス奏者李廷植(イジョンシク)氏、古典と新しい音楽とのセッション「兎の物語」など、多彩なプログラムで構成されている。
高貞子(コンナムルマネジメント代表) |